私は思わず歓声を上げてしまった。青空と白い雲。絵にかいたような初夏の空。眩しくて思わず目を細める。

「喜んだ?」

 まるで褒めて褒めてって尻尾を振る犬のような虎井くんの様子に、ふふっとまた笑ってしまう。

「うん。なんで屋上の鍵持ってるの?」

「それは内緒」

 私の顔を覗き込みながら、虎井くんは悪戯っぽく笑う。いつも仏頂面とのギャップに思わずドキっとしてしまった。

「天気も良いし、ちょうど良い季節だね。この辺りに座る?」

 私は二人が座れるくらいの空いたスペースを見つけて示す。虎井くんも頷くと、手でその辺りを払った。

「しまった。ハンカチとか、要るよな。ごめん。持ってない。こんな時に必要だと思いもしなかった」

 心底やっちゃった、みたいな顔で俯く虎井くんに私はふっと笑ってそのまま腰掛けた。

「大丈夫だよ、制服だし、あとで払えば平気。お腹すいたしもう食べよ?」

 お弁当を膝の上で開いてお箸を出す。手を合わせていただきます、をすると、虎井くんは言いにくそうに口に手を当てて言った。

「……澪って呼んで良い?」

「うん。良いよ」