廊下の向こう側から、夕凪さんが微笑んで手招きをしてる。鷹羽くんは私にまだ何かを言いかけたけれど、諦めたように笑って、私に目配せすると彼女の方へ走って行った。

「……俺の気持ちは……何?」

 予鈴が鳴り響く中、私は彼の言った事を噛みしめるように口にした。

◇◆◇

「澪、遅かったね。何かあった?」

 走って来た私は、体育教師が点呼を取る前に出席番号順に列を作った皆の中に滑り込んだ。

寧々ちゃんは不思議そうな顔で、首を傾げている。

「うん、ちょっと……」

 私の押さえた声を遮るように先生の点呼の声が響く。

「じゃあ、今日はバスケットボールします。二試合終わったら後は自由にしなさい」

 女性の体育教師の筑波先生の一言にワッと皆が沸き立つ。自由にしなさいっていうのはそのままの意味でグラウンドでサッカーをやっている男子の応援をしても自由だよってことだ。

 いつもなら、体育館で寧々ちゃんとおしゃべりしているけれど、今日は。