私はそのままぼーっと、黒板の前の教卓を見た。先生が教室へと入ってくる。

 その時、バタバタと足音がして引き戸がまたガラっと開いて、誰かが入って来た。

 眼鏡をかけた鷹羽くんだった。彼はよほど慌てていたのか、はあはあと大きく息をついている。

「鷹羽、お前がこの時間か、珍しいな。部活の朝練か?」

「はい。遅れてすみません」

 先生の注意の言葉に頷きながら、彼は自分の席へと進む。

 何かあったのかな。でも、私には関係ない話だった。

 鷹羽くんと私の間には、何の名前もついていない。友達でもなくて、ましては彼氏や彼女でも。

 ただのクラスメイト。それが、しっくりきた。