「ねえねえ。澪って、どんな人が理想なの?」

 ある時、前の席で仲良しクラスメイト寧々ちゃんに、休み時間何気なく聞かれて私は同じように何気なく答えた。

「眼鏡掛けてる人って、良いよね……頭良さそうだし」

 昨日読んだ漫画のヒーローは眼鏡を掛けて居て素敵だったと、思い出しながら私は適当に答えた。

「えー! 眼鏡男子! 他には?」

 とは言っても、平々凡々な私は彼氏が出来る兆候もなければ、現実的な好きな人が居る訳でもない。良いなって思う人は居るには居るけど格好良い人は、大体釣り合うような可愛い子と付き合うものだ。

 なので、理想の相手など居るようで居ない私は、何も考えずに今の切実な思いを口にした。

「数学が得意で、教えてくれる人が良いな……ほんと、補習嫌だもん」

「それって、もはや好きなタイプ関係なくない? 家庭教師で良くない? でも、確かに数学出来ると、格好良く見えるよね。理数クラスなんて、私。絶対行きたくないもん」

 大学付属の私立中学校に通う私たちは、大学受験などの関係で三年生から理数系のクラスと文系に別れる。

 私たちは文系でも一応出来る方のA組。理数系は、男の子ばっかりで近づき難い。