「寧々にも、いつも言ってたんだ。彼女ほしーって、そしたら今回ちょうど良い子が居るって聞いて。付き合う振りだけだから付き合う練習に、ちょうど良いんじゃないかって」

 私は横を歩く虎井くんの顔を見上げた。うっすら頬が赤くなっている。

「そっか……相手が私なんかで悪いけど、練習? 付き合ってね」

 虎井くんは一瞬びっくりしたように私の顔を見ると顔を赤くしたまま、頷いた。


「じゃ。俺こっちだから」

「うん」

 C組の入口で、私は虎井くんと手を振って別れた。

 今日の天気とか他愛のない話をしながら登校したけど、なんていうか好印象だった。

 気を使って話してくれたのはわかったし、生意気そうな雰囲気とは裏腹にすごく優しそうだ。

 彼がその気になったなら、彼女なんかすぐに出来ちゃいそうだけどな。

「おはよう。澪」

「おはよう。寧々ちゃん」

 前の席の寧々ちゃんと挨拶しながら、私は着席する。通学バッグから教科書やノートなんかを取り出す。

「行高、どうだった?」

「……うん、優しかったよ」

「鷹羽くんより、行高の方が澪には良いんじゃない?」