虎井くんは、サッカー部なんじゃなかったっけ? 朝練は? なんでここに居るの? と、私の頭の中に疑問符がぐるぐる回る。

「は? 寧々からは、何も聞いてない訳? くっそ。騙された」

「あ……寧々ちゃんが言ってたのって……虎井くんだったんだ」

 そっか、寧々ちゃんは昨日の通話で、誰かに朝に迎えに行かせるって言ってた。

 それが、虎井くんだってことなんだ。

「そう。俺は事情があって、お前と付き合ってるふりしろって言われてきたんだけど、違うの?」

 私は言葉を出さずに、ぶんぶんと首を縦に振った。

 そうだ、何してたんだろ?

  だから朝の準備も気合い入れてしてたはずなのに、その相手がサッカー部の虎井くんだなんて思いもしなかった。

「虎井くんは、大丈夫なの?」

 何も言わずに学校に向かって歩き出した虎井くんの後を、私は慌てて追いかけた。

「……何が?」

「私と付き合ってるふりするの、寧々ちゃんに言われたんでしょう?」

「俺は、別に良いけど……そっちの事情だって、一応聞いたし」