私はその日の朝、自分の姿を念入りにチェックした。

 モブ並みには違いないんだけど、モブなりの最高を目指したいというか……薄いけどお化粧もした。

 休日用の透明のお粉にうっすらとしたチーク、あとピンク色のリップ。

「澪。遅れるわよ」

 お母さんの声で、私ははっと気が付いた。いけない。私はもう遅刻寸前の時間になるまで、鏡の前であれこれしてたみたいだった。

「はーい」

 ベッドの上に置いてあった通学バッグを持って返事しながら、ドアを開けて階段を駆け降りる。


「遅い」

 私は声にビックリして、門の前に居る人を見た。

 真っ黒な長めの髪に鷹羽くんほどではないけれど、高い背、格好良いというより可愛い系の仏頂面。

 隣のクラス、例の夕凪さんと同じクラスの虎井くんだ。

 上級生を中心に、女の子に人気がある。ぶっきらぼうな態度が、生意気そうなところがたまらないと噂の男子だ。