「はあ!? それってどういうこと?」

 私は耳からスマホを耳から10センチ離した。寧々ちゃんは興奮すると声がどんどん大きくなっていく癖がある。

 多分、今の声からすると私の話を聞いている間に彼女の興奮度は最高値に達している。

「うん。そうなの。鷹羽くん、夕凪さんと帰っちゃったから私とは帰らなかったの」

 さっき言ったまんまの言葉を、噛みしめるようにして寧々ちゃんに言った。

 そうだ。あの後、二人の帰る姿を見送ったまま、私は衝撃のあまりしばらく動けなかった。

 いきなりの鷹羽君の言葉が、とてもショックだったのもあるけれど、あの夕凪さんの勝ち誇った顔と鷹羽くんの暗い顔の対比、何度も何度も蘇って来て。

「夕凪ってC組の、あのつんけんした女のこと? 体育の授業、一緒だけど、めちゃくちゃ感じが悪いじゃん。あんな女を選ぶなんて、鷹羽は見る目ないよ」

 テレビの中の現実離れしたアイドル達に夢中の寧々ちゃんは、現実世界で間近にすむイケメン鷹羽くんにも容赦がない。

 でも、と思った。

「鷹羽くん。すごく暗い顔してたの。帰る時も、なんだか夕凪さんに引っ張られるみたいにして帰っていたし……もしかしたら、何かあったのかもしれない」

 私はあの時のことを、思い返すようにして言った。

 もしかしたら、それは私の願望かもしれないんだけど……そうだと良いなっていう。