鷹羽くんは困ったように私を振り返りつつ、引き下がらない様子の夕凪さんに大きく息をついて頷いた。

「ごめん……有馬、少しだけ待っててくれる? 話を聞いて、すぐに帰って来るから」

「うん。じゃあ、靴箱で待ってるね」

 頷いた私の答えに鷹羽くんはにこっと微笑んで、長い足で颯爽と背を向けて歩いている夕凪さんの後へと続いた。


 私は靴箱で靴を履き替えると、近くの壁にもたれ掛った。

 靴を慌てて履き替えながら走り出す足音や今日の小テストの結果の愚痴、そんな喧騒の中でバッグからスマホとイヤホンを出した。

 充電が必要なのは手間だけど、無線だからこれは線が邪魔にならない。

 夕凪さん……何の用だったんだろう? もしかして……告白なのかな?

 鷹羽くんは、なんて答えるんだろう? でも、私に告白をして……そう、私は告白をされて、断ったんだけど彼はこれからも頑張りたいって言ってくれた。

 それならば、きっとどんな可愛い子が告白しても断るはずだ。

 普通に考えたら……そうだよね?

 イヤホンをつけて流れて来たバンドのラブソングに、私は何故か変な焦燥を感じた。