「彼氏じゃないってば」
付き合ってないし。断じて、彼氏彼女なんかではない。
「なんなの、じゃあ」
「……友達?」
「え、友達? 誰の事?」
いきなり声が聞こえて、椅子に座ったままの私と寧々ちゃんは声の主を見上げた。昨日からかけ始めた黒縁眼鏡がまず目に入り、見上げる程の長身。
私がふわふわしている原因っていうか元凶の、鷹羽くんだ。
「あれ、鷹羽くん、部活は?」
寧々ちゃんは、彼のことを話していたことなんてなかったかのように鷹羽くんに問い返した。
部活に入っている子は、ホームルームが終わり次第バタバタと廊下に飛び出して行ってる。
体育会系の部活の子は、先輩が来る前に準備を終わらせたりしないといけないだろうから、二年生の彼は普通だと急ぐはずだ。
「昨日と今日は、部活休み」
肩をすくめながら、寧々ちゃんの疑問に対して鷹羽くんは答えた。バスケ部、今日も休みなんだ。私はほっと安心して、息をついた。
「へえー、そうなんだ。私は用事があるんで先に帰るんだけど、良かったら二人で帰ったら? 友達、なんでしょ?」