鷹羽くんは言葉を選ぶみたいにして、ゆっくりと単語を区切るみたいに話す。
迷いながら今相応しい言葉を、探しているみたいに。
「……昨日、断られたし……潔く諦めるべきなんだろうけど。俺、ほんとに有馬が好きなんだ。簡単には、諦めたくない。だから……もう少しだけ考えて欲しいんだ」
別に嫌でもない真摯な訴えに、断る理由も思いつかなくて、私はこくんと頷いた。
どこまでも、気分がふわふわしてる。
綿菓子の雲みたいな、そういうものに包まれているような。ふかふかの毛皮の絨毯の上を歩いているような。
とっても、形容し辛い不思議な気分。
「おーい、澪! 澪!」
「……わっ、寧々ちゃん、どうしたの?」
椅子から体を無理な体勢で捻って、寧々ちゃんは顔を顰めた。
「いや、まだ帰らないの? 何度言っても、空返事で上の空なんだから……まあわからなくてもないけど? 朝、あんなことがあったらねえ?」
にやにやとして笑う顔に、次は私が顔をしかめた。
「寧々ちゃん!」
「ごめんごめん。ちょっとからかっただけだよ。帰る? それとも彼氏の部活終わってから帰る?」