私は貸し出しの席に座りながらぽつりとこぼした言葉に返答があるなんて、その時に思いもしなかった。

「一緒に課題をしても良い?」

 私はカウンターの向こう側で、にっこりと笑う鷹羽くんに驚いた。

 昨日までは長めに伸ばされていたサラサラの髪は、形の良いおでこをのぞかせてアイドルみたいなと形容するのにふさわしいくらい短くなっていら。

 今日はじめてかけているのを見た黒縁の眼鏡は、彼の理知的な面差しをより一層魅力的に見せていた。

「え……鷹羽くん?」

 思考が真っ白になる。そんな訳ない、がこんなにも続くとどうしてももしかして、と思ってしまう。

 鷹羽くんは、私の事が好きなんじゃないかって。

「うん。有馬、今日図書室の当番なんだろ?」

「そうだけど……え」

 なんで、知っているの? っていう言葉は心に仕舞った。それをどう答えられても戸惑ってしまいそうだからだ。

「俺。今日は部活休みなんだ」

「そうなの。バスケ部は今日休みなんだ?」

「うん。体育館が使えないし、顧問いないから筋トレもなし。ラッキーだったけど、本当にラッキーだった」