沙耶香side









ピピピピッピピピピッ






ん………もう朝?





窓から入ってくる日が眩しく光る。







まだ眠いんだけど…









再び瞼が下がり始めた…






「沙耶香ぁ!起きなさいよー」





ハッ


お母さんの声で目が覚めた。


危ない危ない2度寝に突入する所だった。





「んー…はーい!!」

返事をしてベッドから起き、波浜高校の制服に袖を通す。
 



鏡の前に座り、髪の毛をブラシでといて、

軽くリップを塗る。






よしっ!準備完了!





ドタドタドタッと階段を駆け下りると、お母さんがお弁当を作ってた。




「おはよう、沙耶香〜」




「おはよっ!お母さん! !」


私とお母さんは2人暮らしだ。

3年前、私が中学2年生の時に、

お父さんとお兄ちゃんは亡くなっている。


私のために毎日働いて忙しいはずなのに、

出来るだけ私との時間を守ろうとしてくれてる。


優しくて大好きなお母さん!


「あ、そうそう今日は帰ったら話があるから
寄り道しないで帰ってきてね。」



「話?今言ってくれたらいいよ?」


話ってなんだろ。




「帰ってきてから言うから。それよりも、時間大丈夫??」





ハッとして時計を見ると、もうすぐ8時になる。




「あっ!やばっいってきまーーす!!」



「はーい。行ってらっしゃい!!」








ガチャ



ドアを開けると、イライラした様子の幼なじみ、
蒼が待っていた。




「あっ!蒼!おはよーっ!」







「おい!おせぇんだよ」




蒼がキッっと私のことを睨みながら言ってくる。





「そんなに遅くないし、蒼だって遅れてくる時あるでしょ!」



「俺はめったに遅れねぇけどお前はしょっちゅう遅れるだろ」



「女の子は準備に時間がかかるんですー!
比べないで貰ってー!」


「お前が先に比べたんだろうが!ってかお前メイクとかしねぇだろ」





「リップはしてるもん!」



「リップひとつでメイクなわけねぇだろ!
そんなんだから彼氏が出来ねーんじゃねぇの?」


「そ、そっちだって彼女なんか一回も出来たことないじゃんー!」


「俺は出来ないんじゃなくて作らねぇの!
俺が今までどれだけ告白されてきたか知ってるよね?」




そう、こいつはモテるんだ…




ちょっとばかり顔がよくて

ちょっとばかり運動神経がよくて

ちょっとばかり頭が良いだけのこいつが!



こいつにキャーキャー言ってる女どもは、

本性を知らないんだ!




彼女らの前では王子様キャラだしねっ!





この平凡顔の、私といつも一緒に
登下校してるせいで、
私が今までどれだけ蒼ファンクラブの人達に
睨まれてきたか!!






「っていうかそんな告白されてるんだったらOKしたらいいのに、なんで全部断ってるのよ??」







そう、今まで山ほど告白をされてきたコイツは
告白にOKをしたことが無い。





「別になんででもいいだろ!」





「はぁー?なによぉ!!教えなさいよ〜!」






「……お前以外にされても意味ねぇんだよ……」




「え?なんて?聞こえなかった。」


なんて言ったんだろう…


そして呆れた顔をした蒼が言った。


「…はぁ………お前には一生教えねー!」




「ええぇ!!なんでー!!」




蒼のケチッ!








☆☆☆☆☆




「おはよ沙耶香」


「智香!!おはよーっ!!」


昇降口で蒼と離れ、中学からの親友、
横田智香(よこたともか)と一緒に教室へ向かう。





「あっハイっ昨日うちに忘れていった携帯」

「あっ!ありがとー! 昨日は楽しかったねー!」




昨日は智香の家に言ってゲーム大会をした。


「はぁ……勉強会なのに勉強せずに人のゲームで遊んでただけでしょ。」


「てへっ」


「ってかあんた、昨日の数学の宿題が難しくて分からなかったから、あたしに聞きに来たんでしょ。
なのに結局家でやるからとか言って
ゲームやり出して。

結局あれから宿題やったの?」





…ん?宿題……??




「あっ!!!」


すっかり忘れてた…




「はぁぁー…その様子じゃやってないのね」


「やばいっ!!やってない!!…どうしよう!」


「自業自得ね。ちなみに数学は1限目でーす」



「智香っ!一生のお願い!宿題みせて!!」



「無理!一生のお願い何回使ってんのよ!自分でやれ!」


ううぅーー…智香の薄情者〜!!!


っていうか待って、頭いい友達なら他にもいるじゃん!!



「そうだ!蒼に見せてもらえばいいんだ!!!」


私ってばナイスアイデア〜!



「見せてもらえばいいんだ!…じゃなくて!
自分の力でやりなさいよ!!!」


2年1組の教室に着き、私の後ろの席に座っている
蒼に話しかけた。



「蒼〜!!あのね、一生のお願い!!!
宿題見せて!!!!」






「無理!自分の力でやれよ」


即拒否っ!?




「あー!それ智香にも言われたぁ!!」



でもここまでは想定内!




「蒼〜?見せてくれたらぁ今日帰って、
うちにある蒼の好きなシロクマのアイスあげるよ?それでも見せてくれないの〜?」


しばし無言。

ふふっ蒼の中の天使と悪魔が戦ってるな!


「はぁぁ……」



盛大にでかいため息をついたな!





「……………ん」




しぶしぶ宿題を手渡してくれた!




「さっすがぁ!!蒼ー!!ありがと〜!!」



シロクマアイス常にストックさせとかないと!


「ありがと〜!!!蒼大好き!!」


蒼に感謝を伝えてさっそく宿題を写し始める。