アシスタントって‥‥‥私が?


『そちらに書いてある通りです。
 資格などがないことから、いきなり
 正社員とはいきませんが、良ければ
 デザインに携わるお仕事場で
 山岡のアシスタントをして
 頂けると私も助かります。』


山岡さんの‥アシスタント‥‥


昨日までは、自分の作品を
誰かに見てもらいたいという気持ちで
やってきたけど、まさか会社に
入ることができるなんて‥‥


「やります‥‥やらせてください!」


紙を胸に抱き締めると、
ユイさんに泣きながら頭を下げた



大学を卒業して入社した広告会社で、
毎日深夜まで安月給で働かされながらも
デザインに少しでも携われてる幸せで
乗り越えてきた3年間だった。


アシスタントがどういうものか
まだよく分からないし、デザイナーに
なんてならないことも分かってる。


それでも、山岡さんという方は、
私のあの作品を見た上で
こうして手紙をくださった。



『こちらこそ願ったりです。
 私も肩の荷が‥‥いえ‥‥私も
 とても嬉しいです。』


「あ、あの‥今勤めてる会社を
 すぐには辞められないので、
 日程が決まり次第になりますが
 大丈夫でしょうか?」


ブラック企業だろうと、
3年お世話になった会社だし、
仲良くしてくれた人もいる。


ちゃんとけじめをつけて辞めてから
前に進まないと行けない気がする。


それに住み込みとなると、
引越しの手続きや準備も必要になるから
そんなにすぐには難しい‥‥


『分かりました。
 山岡の方にそうお伝えします。
 では決まりましたら、山岡に
 ご連絡頂けますか?』


ユイさんは、鞄から名刺を1枚
差し出し私の方にまたそっと差し出した


FTFデザインの住所と
山岡さんの連絡先が書かれたそれを
両手で受け取り笑顔で返事をした。


『それでは私の任務は完了しましたので
 お暇させて頂きます。
 突然の訪問で失礼しました。
 では、またお会いできるのを
 楽しみにしてます。』


「はい、ありがとうございます。
 こちらこそ
 よろしくお願い致します。」


ユイさんを玄関まで見送りドアを
閉めると、まだ嘘のような話に、
頭がぼーっとしてしまう。


もっとデザインに携われるんだ‥‥


どんな人だろう‥‥
会ったら沢山お礼を伝えたいな‥‥


昨日までのどん底のような気持ちから
一変して、ここ数年で1番嬉しい
1日に変わってしまった。