‥‥‥好き?


今この人好きって言った?


「‥‥likeの方ですよね?」


『残念だけどloveかな。』


ドクン


ちょっ‥‥ちょっと待って‥‥


出会ってまだ数ヶ月しか経っていないし、入社して1週間の社員の何を見て
そんなことが言えるの?


私は人を好きになるのに割と臆病で
時間がかかるし、色々積み重なって
付き合いたいって思う派だから、
軽々しい告白に若干退いてしまう。


『オーディションの日に一目惚れ
 したって言っても信じない?』


「まぁ‥‥‥普通信じませんね。」


一般的な体型と容姿、なんなら胸も
小さめ、おしゃれには程遠い出会いから
スタートしたのに、こんなモデルのような顔をした人が一目惚れ!?


あ、ありえない‥‥‥!!


『どう考えてもらっても構わないけど、
 逃すつもりはないし、伝えたことは
 本音だからちゃんと茅葵も俺のこと
 考えてくれないか?』


「か、考えるって‥‥‥
 本気で言ってます!?」


『言っただろ?本音って‥‥』


どうしよう‥‥‥なんか‥‥おかしい‥


いつものふざけた山岡さんで
いてくれたらいいのに、
見つめてくる視線が真っ直ぐで
その瞳に吸い込まれそうになる


相変わらず腕の中にいるし、
早く家に帰りたいのに‥‥‥



『‥‥ちーちゃん?』

えっ?


山岡さんの背後から聞こえた声に、
ドサっと何かが落ちる音がしたので
慌てて腕の中からすり抜けた


「えっ!?な、なんでここに!?」


持っていた買い物袋が通路に落ち、
こちらを見て口をポカンと開けている
友人がその場で山岡さんを見て
固まってしまっている


『痛っ!!』



本日3度目の突き飛ばしをくらわせ
彼女に駆け寄ると、放心状態の肩を
両手で掴んだり、頬を軽くペチペチと
叩いていく


「ちょっと丸子!!しっかりして!!」


私の家のお向かいに住む丸子は
小、中、高と共にした幼馴染で、
1番の親友でもある


「マル!?聞いてる!?」


『マルちゃんって言うの?
 可愛い名前だね。』


山岡さんが私の背後から現れると、
マルの視線がロボットのように
山岡さんの方にうつりガン見している


『‥‥‥王子様だ。』


「は?ま、マル!?何言ってるの!?
 王子様じゃないよ、こ、この人は
 えっと‥‥‥」


『初めまして、マルちゃん。
 茅葵の恋人です。』


「はぁ!!?何言ってるんですか!?
 違いますし!!」


もう!ほんとに
山岡さん今すぐどこかに行って欲しい!
マルには刺激が強すぎる!!