『痛っ‥‥‥』


えっ?


ドアノブに手をかけたとこで
聞こえた声に振り返ると、腰に手を当て
前屈みになっている山岡さんが目に入り
立ち止まる


『ごめん、さっき倒れたときに腰
 やったかも‥‥。』


「ええっ!?
 倒れたんですか!?何してたら
 そんなことに‥‥」


『ん?痛っ‥なんか無性にデザインが
 湧き上がったから色々してたら
 朝になってて、そのまま椅子から
 落ちた‥‥ごめん肩貸してくれない?
 このままベッドで寝るから。』


「あっ、はい‥」


本当にツラそうに顔を歪めるから、
咄嗟にサンダルを脱ぐと、山岡さんの
腕を肩にかけ部屋まで一緒に歩いた


‥‥‥裸だから素肌が触れて
どこも触れない‥‥‥


ガチャ


「うわ‥‥なにここ‥‥」


床中に散らばったデザイン画の紙、
床に積み上げられた沢山の本に
まるで宝の宝庫に来たかのような
気分にさせられる



踏んではいけないから避けながら
山岡さんをベッドに運ぶと、横を向いた
時に見えた背中が赤黒くなっていた


せめて服を着ていたらもう少し打ち身も
少なかったはずなのに‥‥



「あの‥湿布とかないんですか?」


流石に歩けてるから骨とかまでは
異常ない気がするけど冷やした方が
良さそうな気がする


『そんなのないよ‥はぁ‥平気でしょ、
 寝てたら治るから‥‥ごめん一睡も
 してないから寝てい‥‥い?』


返事をする前に閉じられてしまった
綺麗な瞳に、起こすのも面倒だと
思いそばにあったシーツをそっとかけた



また服着ないまま寝ちゃったし‥‥


それにしても凄い数のデザイン画‥‥


私も勉強中のグラフィックデザインな
だけに、床に散らばってるものが
どれも悔しいくらい素晴らしくて
いつのまにか座り込んで、一つひとつ
見入ってしまう


凄い音がしたのは、山岡さんの椅子が
転がった拍子に倒れた本の音か、
寝ぼけて床で滑って転んだのか‥‥


見た目は綺麗でモデルのような出立ち
なのに、部屋は散らかり放題だし、
オフは手が早くて困るし本当に
ギャップが凄いけど、このデザイン画は
どれも好きだ



片付けるつもりはなかったけど、
また起きてきた時に転ぶと困るので、
デザイン画もデスクの上にクリップで
留め、本も本棚にそれとなく綺麗に
並べて片付けた



あ‥‥この本‥‥


山岡さんも持ってたんだ‥‥‥