ただ生存を確認しに来ただけ。


特別な意味なんて勿論ないし、
とにかくあの大きな音で怪我とかせず
生きてるのを見たらすぐ帰ろう‥‥


彼女とかいたら逆に気まずいしね‥‥



ガチャ


ドキン


鍵が開く音に体がビクッとハネると、
なんとなくドアから少し離れてから
ゆっくり開く扉に目を見張った



『‥‥どうした?こんな朝早くから』


「ヒッ!!ふ、服来てくださいよ!」


少し寝癖のついた長髪をかきあげながら
現れた山岡さんは、ボクサーパンツに
上は裸で目のやり場に困り顔を背ける



名前名乗ったんだから、服くらい着て
出てくるのが普通なのにやっぱりこの人
変わってると思う


女に見て欲しいわけではないけど、
流石にここまで意識されてないのも
少し悲しいくらいだ



『悪い‥‥癖で。ちょっと待ってて。』


「あっ!!もういいです。生きてるの
 確認できましたから帰ります。
 凄い音がしたので心配だったんで。」


傷ひとつなく元気そうな姿が分かれば
もうここに用なんてないから、
帰って二度寝したいくらいだ



グイッ


「ちょっと!なんで腕掴むんです!?」


裸の上司相手に、本当に困ってしまい
腕をブンブンと振るけど、意外にも
逞しい身体つきなのか解けない


『心配して来てくれたんだ?』


「えっ?まぁあんな音すれば、
 誰だって来ますよ。」


『生きてるか心配なほど?』


「生きてたんで良かったですね。
 帰りますから離して‥ワッ!」



バタン


もう一度グイッと引き寄せられると、
目の前に山岡さんの胸があり、
そのまま抱き締められてしまった。


「や、や、山岡さん!!」


『何?茅葵‥‥』


ドクン


いや‥ドクンじゃなくて!!
朝っぱらから裸な男に抱きしめられてる
状況がおかし過ぎて暴れるのに、
離してもらえない


「お、怒りますよ?」


『いいよ怒っても‥‥でもその前に
 挨拶だけさせて?』


「挨拶って‥‥えっ?‥‥ンンッ!」


顎を捉えられた途端に唇が塞がれ、
目の前に山岡さんの美しい顔が
ドアップで映し出される


「ん‥‥ちょ‥‥‥ンッ
 ‥‥‥‥こんな長い挨拶変でしょ!」


息苦しさからようやく解放されると、
クスクスと嬉しそうに笑う山岡さんが
私の怒った顔を見ておでこにまたキスを
落とした。


『ごめん‥‥茅葵が来たことが嬉しくて
 止められなくてさ。』
 


半分腰砕けになりそうな私の
腰と背中を抱えて笑う山岡さんを
睨むと、なんとか突き放して玄関から
飛び出そうとした。