そんなことを言われても、
ハギさんは山岡さんみたいに
過度なスキンシップをしないし‥‥


仕事中はそういうことは勿論ないけど、
雇い主でもあるし、なんとなく
他の人とは違う態度になってるかも
しれない。


それより疲れてるからもう帰りたいし、
山岡さんもみんなのところに早く
向かえばいいのに‥‥


『茅葵ちゃんってハギ呼んでた‥‥』


ん?


『ユイも茅葵さんって‥‥』


「‥‥‥何が言いたいんですか?」


彫刻みたいな綺麗な顔して、
中世的でおしとやかならまだしも、
なんかネチネチしてて男らしくない
態度に、苦笑いが出てしまう。


『俺の方が沢山話してるのに、
 他の人と先に親しくなってる。』


私は今上司ではなく
保育園児と話してるのだろうか‥‥


セキュリティをかける
私よりも背も高くて勿論年上で
上司でもあるのに、口元がピクピクと
引き攣ってしまう



「親しくないのに過度に
 ボディタッチしたり、
 キスしたりしておいて、呼び方一つで
 今更何を言ってるんですか?
 好きに呼んでいただいていいので
 もう帰りますね。」


少しキツめの言い方になってしまった
けど、はっきり言わないと、いつまで
経っても帰れない気がしたので、
頭を下げてから階段を登り始めた



まるで仲間外れにされた小さい
子供のような言い方に、さっきまでの
落ち着いた仕事モードの山岡さんは
なんだったのかと思うほどだ


あー‥‥なんか最後にどっと
大きな接客をして疲れが出た気がする‥



『茅葵』


「えっ!!?うわっ!!
 な、何してるんですか!!?」


背が高いからか、私よりも下の段に
いるはずなのに、腰に手を回されると、
耳元で色っぽく名前を囁かれ驚いた



『ん?だって
 好きにしていいって言われたから、
 呼んだだけ。茅葵だと普通か‥‥
 ちーちゃんにする?』


はぁ!?



「や、やっぱり山岡さんは
 細川でいいです!!」


グイッと腕からすり抜けると、
背後から聞こえる笑い声を無視して
急いで階段を駆け上がり家の中に
逃げ込んだ。


「はぁ‥‥‥変な人だ‥‥。」



黙ってたら、そこら辺のモデルや
芸能人にも勝てそうな見た目なのに、
オフになった途端に別人格で困る