「はぁ‥‥久しぶりに嫌なこと
 思い出しちゃったな‥‥」


ベッドに座ってそのまま仰向けに倒れ
上の階にいるだろう山岡さんを想った


オフではあんなヘラヘラしただらしない
感じだけど、仕事は厳しいって言ってた
から頑張らないといけない‥‥


せっかく大好きな仕事に携わる
チャンスをいただけたのだから、
自分の為にとにかく結果を出さないと‥


頬を両手で軽く叩くと気合を入れ、
片付けを再開した。



三連休最後の日は、
残っていた片付けを全て終わらせて、
午後はデザインの本を読んだりしながら
ゆっくり過ごすこと専念して早めに
眠りについた。



「おはようございます‥‥」


デザインオフィスの始業時刻は割と
遅めで、11時スタートの夜9時までで
10時に来て空いてなかったら帰ろうと
思っていたら鍵が空いていたので
そっとオフィスに入った。


『おはよう、細川さん。』


「おはようございます。
 改めて本日からどうぞ
 よろしくお願いします。」


既にデスクで仕事をしていた
山岡さんに挨拶に行き、自分の
デスクに荷物を置き腰掛けた。


『今日は覚えることが多いと思うけど
 とても大切な事だから大変だけど
 頑張って欲しい。』


「は、はい!頑張ります。」


『フッ‥まだみんな来るまで
 時間あるから2階の本でも読んでて
 いいよ。』


「ありがとうございます。」


少し構えてたから、オフとは違う
話し方や雰囲気にホッとした。


もう帰れる場所もないし、
早く落ち着いて自立しないと‥‥‥



それから皆さんが出勤すると、
改めて挨拶をさせていただき、
その日から覚えることが多すぎて
暫くは本当に余裕が持てなかった


『細川さん、18日から出張だから、
 すまないけど、この住所のそばに
 ホテル予約と新幹線を8時台と
 帰りは次の日の20時以降で
 取ってもらえる?』


「天音さん、分かりました。」


『ごめん、領収書出し忘れてた。
 今からでも間に合う?』


「ハギさん、大丈夫ですよ。」


山岡さんのアシスタントとしては
まだ何もできてないけど、全体の
流れやコミュニケーションが取れて
逆にありがたかった。


自分から話しかけるのとかは
得意な方じゃないから、仕事を
通して話せるようになって自然に
会話が出来ているから。


最初に覚えさせられたのは、
取引先の会社や担当者のリスト。


電話がかかって来たり、来客された際、
すぐに誰の担当かが分かるようにと、
パソコンのファイルに顔つきで
特徴まで書かれていたのだ。