おっと‥‥いけない‥‥
露骨に嫌な顔をしてしまったかも‥‥


「山岡さんのように素敵な方には、
 素敵な恋人がいらっしゃるので
 いいじゃないですか。
 今朝の方もお綺麗でしたし。」


買ってきた小さめのスイカペペロミアのグリーンをオープンラックに飾り、
その隣の透明のフラワーベースに
ドウダンツツジを。
前の家から持って来ていたオリーブの
木なども配置しながらそう呟いた



『モモのこと?
 ハハッ‥‥モモは彼女じゃないよ。』


「えっ?だってキスして‥‥ッ」


しまった‥‥
今朝は何も見てないことになってるのに
余計なことを言った口を両手で押さえる


座り込んでいた私に足音が近づくと、
背後に座った山岡さんが私の肩に
顎を乗せ覗き込み視線がぶつかった


『キス‥‥見てたんだ‥‥』


「み、見てません‥‥ただ‥ンッ」


チュッっとリップ音を立てて首筋に
山岡さんの唇が触れたので、
逃げようとしたらそのままお腹に
手を回され山岡さんの胸に持たれるように倒れてしまった


「は、離してください!!」


『モモがキスしたのはここ。
 ちなみにモモは整体師で性別は
 男だから。』


「えっ?‥‥‥ええっ!?」


あんなにスリムで綺麗な人が
お、男!?


ポカンと口を開けたまま、真上から
見下ろす山岡さんを見ていると、
それが面白かったのか綺麗な顔を
崩して大笑いされた


「や、山岡さんは男ですよね?」


『すごい発想するね。187センチで
 女ならデザイナーじゃなくて、
 モデルかスポーツやってるでしょ。』


「あっ、そうなんですけど‥‥
 それよりいい加減離してください!!
 明後日から働き辛いですから。」


バタバタしながらようやくそこを
すり抜けると、警戒心剥き出しで
離れた場所に移動した



『残念‥抱き心地良かったのに‥』


「そ、そういうのパワハラですよ。」


『海外じゃこんなの日常的にある
 スキンシップだけどなぁ‥‥。
 大丈夫だよ。仕事の時はこんな
 姿は見せないから。』


えっ?


立ち上がり私の目の前まで来ると
頭をくしゃくしゃに撫でてくれ、
小さくフッと笑った


『仕事は厳しいよ、俺。
 悪いけど妥協は嫌いだし、ダメな
 事には冷たく否定もする。
 チームワークを乱すなら、即効
 辞めてもらうから、アシスタント
 大変だけど頑張って欲しい。』


トクン