可愛らしい声が聞こえて振り返ると、
今日も200%本気のロリータ姿の
ユイさんがオフィスから出てきた。


「こんにちは。お休みなのに
 お仕事ですか?」


『一件、変更がありパソコンで確認
 出来ない資料を見に来てました。
 細川さんはお引越しですよね。』


「あ、そうなんです。
 足りないものをこの休み中に
 揃えようと思いまして‥‥。」


今まで仕事ばかりで殆どオシャレを
することなく過ごしてしまったから、
部屋もそうだけど、服なども買い足した


みんなすごく個性的だから、
流石に堅苦しいスーツで毎日ここに
いるわけにはいかないからな‥‥


『良ければ運ぶのお手伝いしますよ。』


「えっ?そんな‥大丈夫ですよ!
 私以外と力持ちですし、ユイさんの
 素敵なお洋服が万が一傷付いたら
 悲しいですから。」



それにその厚底の靴で転んだりしたら
怪我しそうだし心配過ぎる‥



『いえ、運ぶのは私ではなく』


『俺がいるでしょ?細川さん。』


山岡さん‥‥


出来れば今朝のことがあるから
もう会いたくなかったのに、どうして
こうも会ってしまうのだろう


『では私は用事がありますので、
 細川さん、明後日からよろしく
 お願い致します。』


「えっ!?ゆ、ユイさん!!?」


ふわふわなスカートを揺らしながら
フリフリの日傘をさした彼女は
可愛くペコっとお辞儀をすると
無情にも帰ってしまった


「や、山岡さん、本当に大丈夫
 ですから帰っていいですよ!」


『いいよ、家に行くついでだし。
 重いものは運ぶから。』


「えっ!?あっ‥‥」


軽々と荷物を持ち階段を登っていく
山岡さんに、私も荷物を持てるだけ
持って追いかける


ありがたいけどありがたくない
この状況にどうしていいかわからず、
とりあえず運んでもらったらお礼して
帰ってもらおうと頭の中で考えていた


『開けて?中まで運ぶから。』


「‥‥はぁ‥分かりました。」


きっと断ってもこの人は荷物を置くまで
絶対帰らないと判断したのだ


明後日から雇い主であり上司であり、
私はこの人をアシストしながらデザイン
を学ぶのだから仕方ない‥‥


『細川さんって恋人いないの?』


「今はいません。どうしてですか?」


荷物をリビングまで運んでくれた
山岡さんがなかなか帰らないので、
仕方なく無視して荷物を片付けて
いるけど、空気読んで帰って欲しい‥


『へぇ‥どんな人を好きになるのか
 気になるな。』


はぁ?