『今日は片付けで忙しいと思ったから、
 食事は適当にこれ食べて。』


「ありがとうございます‥‥
 休日なのにわざわざすみません。」




3連休明けから仕事がスタートできるように、引っ越しや前の住居の立ち会いを
詰め込んだから体を休めながらのんびり
片付けようと思っていた。



『上がっていい?』


「えっ?‥あ‥散らかってますよ?」


上がってくの?と思いつつも、
差し入れはちゃっかり受け取って
しまったので追い返すことが出来ない‥


苦笑いで招き入れると、山岡さんは
普通に家の中に入って行ってしまった



『どう?荷物全部入りそう?』


「余裕で大丈夫です。食器が多いですが
 キッチンも前よりかなり広いので。」


『ほんとだ‥‥いいね。
 デザインが綺麗なものばかりだ。』


「そうなんです!
 本当にどれも素敵で‥」


しまった‥‥

好きなものを褒められて、自然に
山岡さんの横に並んでしまった後に
距離感が近すぎたのでそっと離れる


『‥‥‥どうかした?』


「い、いえ‥‥」


覗き込むような体制で私の方に
詰め寄ってきたので、思わず両手で
山岡さんをグッと押してしまった


『フッ‥今日は何もしないよ。
 ただ顔見に来ただけだから。
 あと、はいこれ‥プレゼント。』


えっ?



四角い額に入ったものを包装紙を
外して取り出すと私も気になり
それを遠慮がちに覗き込んだ


「えっ?‥‥どうして‥‥‥」


アイランドキッチンの上に置かれた
絵を見た後に山岡さんを見上げる


『どうしてって、君がデザインした
 んだろ?よく出来てたから
 引き伸ばして知り合いに頼んで
 作ってもらったんだ。
 もしかして気に入らない?』


優しい顔で笑う山岡さんに、
見上げながら目尻から涙が溢れ、
首を大きく何度も横に振った。


あの日、誰にも見てもらえなかった
私がデザインした絵が真っ白な額に
入れられている‥‥


『タイトルはSTART、新しい人生‥。
 今の君にピッタリだな。』


手渡されたそれを胸の前で
抱き締めると、大きな掌で頭を
何度も優しく撫でてもらえた。


「ありがとうございます‥‥
 これからツラクても‥これを見て
 頑張れそうです‥ッ!」


パッと見上げた先に山岡さんの顔があり
顔を逸らして逃げようとすれば、
腰に手を回され阻止されてしまった