ギィィ‥‥


「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥はぁ」


息も苦しく汗が体中を伝う中、
重い扉を開けた向こうには、
今日というたった1日の為に
ツラい会社の仕事も耐えてきた私が
唯一チャンスを掴める日だったのだ


扉のステンレスの取っ手が汗で滑り、
もう片方の手の甲で額の汗を殴った



『お疲れ様でした。以上で
 アマチュアデザインコンテストを
 これにて閉会致します。
 賞を受賞された皆様本当に
 おめでとう御座います。尚、
 参加された方々もありがとう
 ございました。皆様お気をつけて
 お帰りくださいませ。』



「はぁ‥‥‥嘘‥‥‥そんな‥‥」


暗かった会場内が少しだけ明るくなり、
多くの人が出口に向かう中、重い
足取りでステージの方に向かう私に
色々な声が飛び交う


ぶつかりながらもなんとかステージの
真ん前まで来ると、スクリーンが
虚しい音を立てて巻き上げられていく
様子をただ泣きながら眺めるしか
なかった‥‥


また1年‥‥あの地獄のように
コキ使われる会社にいないといけない。


この年齢で今更辞めたとしても、
再就職できるかも分からない世の中で、
今日だけは結果がどうであれ
ここに立ちたかったのに‥‥


ステージ上の中央に大きく掲げられた
テーマの『人生のスタート』


これを見た時に、もしかしたら
私も再スタート出来るかもしれないと
1年夢見てきた。



鞄から資料を取り出し、ステージの
中央に置くと涙を拭って頭を下げた



「お願いします!終わってることは
 承知の上で、どうか見ていただけない
 でしょうか!?どうか‥‥一度だけ
 ‥‥お願いします!!」


人生でこんなに大きな声なんて
出したことなんか一度もない


それでも今出さなければいけないって
心が叫びたいと願ったのだ



『あの、すみませんがもう終わりました
 のでお引き取りを。来年はちゃんと
 時間内に受付して参加をして
 頂けますか?』


「ツッ!!‥‥‥そこを何とか‥‥」


『あのね?
 しつこいと警備を呼びますよ?』


そんな‥‥‥‥‥
休日なのに仕事に呼び出され、
山のような資料作成に追われて
来れなかったのは私が悪いけど
見てくれるだけでもダメなのかな‥‥


「お願い‥します‥」


『あなたね、いい加減に!』


『ちょっと待って。』


えっ?