「ウルと結婚なんかしてみなさいな。きっと、三日で離婚よ」
「はは、三日保つかどうかも怪しいな?」

 私もウルも譲らない性格なので、下手に夫婦になどなったら意見がぶつかり合って喧嘩ばかりの日々だろう。何より、彼と家庭を築くなんてこと、全然想像できない。
 彼の方も同じ意見のようで、アシェラとベッドになんか入ったら寝首をかかれそう、なんて随分と失礼なことを呟いた。

「で? さっきから俺の足を踏みつけているお前は、何か言うことはないのか? ──ロッツ」

 その失礼な男の左足を思い切り踏みつけてやると、どうやらすでに右足を踏んでいた者があったらしい。
 両足の甲に大きさ違いの靴跡を刻まれて情けない顔をするウル越しに、私は同志に目を向けた。
 すると、綺麗な菫色の瞳がこちらを見つめ返してきたかと思ったら、ゆっくりとその口が開き──

「僕はね、アシェラが決めたことに口出しをしないよ」

 私は、がっかりした。

「でも、幸せになってほしいと思う。大切なひとだから」
「そう……ありがとう」

 この時、私達は三年生になっていた。
 お人形さんのように愛らしかったロッツに、身長を抜かされたと気づいたのはつい先日のことだ。
 年齢にして十三歳。入学した時よりも大人びた私は、もう自覚していた。
 彼に──ロッツに、恋をしていることに。