ここで、ロッツは私を見た。
 私も、彼を見る。
 朝日に照らされたその顔を、やはり素直に美しいと思った。
 そして、そこにゆっくりと滲んだ微笑みを、私はこの時、どうあっても愛おしいと感じたのだ。
 
 
「アシェラは──僕の、女神だから」


 私は、そんな自分に対して苦笑いを浮かべ、意地悪く言う。

「その言葉も、私を絆すための嘘かしらね?」
「ちがう」
「どうやって、それを信じろと?」
「僕の一生をかけて証明する」

 ロッツの考えていることなど、今も昔もこれからも、きっとわからない。
 それを苦しいと感じる私の思いを、ロッツもきっと一生理解できないだろう。
 でも……
 
「それを証明するために、私は一生、あなたに付き合わないといけないわけ?」
「うん、そうだよ。アシェラはこれから一生を僕と一緒に過ごすんだ。言ったでしょ、もう離れたくないって」

 この男と過ごす一生は、きっと楽しそうだ。
 私は今、自分がこれまで感じたことのないくらい、わくわくしていることに気づいた。
 ぽっかり空いていたはずの心の穴なんて、塞がるどころか内側から湧き出したものが溢れてしまいそう。
 私は、ロッツの肩に頭を預けて笑った。

「ロッツとこうしているなんて、不思議。ほんの三日くらい前までは、私はまだラインと結婚するつもりだったのに」
「……アシェラの口から、もうその名前は聞きたくないんだけどな」

 ラインの名前を出すと、ロッツはとたんに拗ねた顔をする。
 これが演技だとしても面白いと思っていた私に、彼は唸るように言った。

「アシェラは信じないと思うけどね。ラインは、ちゃんと君のことが好きだったんだよ」
「……何を言い出すの?」

 突拍子もない話に、私も眉を寄せる。
 ロッツも拗ねた顔のまま、そんな私の頬を撫でた。