結局、六年間の王立学校在学期間中、全十二回の成績発表のうち三回ばかり、私は悔しくも二位に終わっている。
 単独首位を取れたのは四回。残り五回は同点首位で、争った相手は十二回ともロッツだった。
 彼やウル、マチアスやスピカと、十歳から十六歳まで多感な時期をともに過ごした経験は、私にとってかけがえのない財産になっている。
 無心に勉学に打ち込むことも、積極的に人脈を広げる努力もせず、無為に過ごしていたラインは、そんなことは知る由もないだろう。
 けれども彼には、私にはない勇気があった。
 それが証明されたのが、王立学校を卒業して四年あまりが経った今日、この瞬間だ。
 過去から現在に意識を──野ネズミの黒々とした瞳から壇上に視線を戻した私は改めて口を開く。

「祖父達が勝手に決めた私との婚約を放棄し、自分で選んだ相手を妻とする──自分に正直に生きようとする勇気が、ラインにはあった」
「いやー……ただ単に、立場をわかっていないだけのような気もしますけど?」

 ジャックが呆れるのはもっともで、ラインの立場では誉められたことではないし、実際誰も誉めてはくれないだろう。
 私とて、ふざけるなと思わないでもないけれど……

「私には、できなかった。だから少しだけ、ラインが羨ましい」
「姉上……」

 降り注ぐ日の光に照らされたラインとナミは、幸せそうだった。
 たとえ、その光が神の祝福ではないとしても。
 彼らがこれから歩む道筋には、光が差すことはないとわかっていても、あの光景を美しいと感じたのだ。
 自嘲の笑みを浮かべる私を、ジャックと、そしてなぜか野ネズミも見つめていた。
 そんな中、祭壇の真下にいた大司祭が、血の気の引いた顔でこちらを振り返る。
 縋るようなその眼差しを、私は微笑みでもって拒絶した。
 そして今度は、彼が聖女だと言いふらしたナミが、ヒンメル王国にやってきた時の記憶を手繰り寄せる。