*聖夜のデート?*


冬祭りは想像通り、カップル多めの賑わいを見せていた。

「藤堂君ってワンコ気質ですよね。ちょっと親切にすれば、すぐ尻尾を振って懐いちゃうと言うか」

屋台で買った今川焼きを食べてる彼女。
そんな彼女から不意に本日二回目のワンコ発言をされた。
正直、心外だ。
今日彼女に付き合ったのは、確かに親切にされたお礼でもあるが、仕返し心の配分の方が多い。

「じゃあ、杉原さんは、ニャンコってとこですか?美味しいご飯を貰っている間は喉を鳴らして甘えるけど、要件が終えたら、そっぽ向いてどっか行っちゃう気まぐれニャンコ」
「どうでしょうね」
「否定しないのかよ」
「では藤堂君、ニャンコな私は、貴方の何を美味しいと思って喉を鳴らしてるとお考えですか?」
「どんなクイズだよ。そうだな、見た目とか?」
「自分で言いますかそれ。確かにイケメンさんではあると思いますけど、でも不正解」
「出会った当初、写真で一目惚れとか言ってませんでしたかね?」
「そんな事言いましたっけ?」
「言いました。で、正解は?」
「今はまだ教えてあげません。そのうちに、ね」

『杉原さん、駄目だよ。俺の事が好きなら、此処は喜ぶ所だよ』

俺がさっき彼女の何らかしらの企みに気づいてる発言をしたからか、彼女はあえて「そうだ」と俺に念押しして教えて来た。
自分はご馳走欲しさの猫だと、食べ終えたら素直にお別れするつもりだ、と。
今川焼きを美味しそうに頬張る杉原さんは可愛いが、飄々とした策士な一面に憎ったらしさを覚えてしまう。

「あ~~~お姉様!!」

突然、俺と彼女の間に割り込み、彼女の腕にしがみ付く少女。
杉原さんは慌てて、今川焼き最後の一口を呑み込んでいた。

「奇遇ですねお姉様!いや運命に違いありません!」
「え、阿澄さん?」
「今日は眼鏡なんですね。知的感が増してとてもお似合いです。お姉様の愛らしい魅力が更に惹き立ってます」

彼女に熱烈アピールをかます元気娘の登場に、俺は二、三歩下がってしまった。
そんな俺に、元気娘は勝ち誇った様な視線を向けて小さく笑う。

「お姉様、私と一緒にお祭りを回りませんか?」
「でも阿澄さんもお友達を来ているのでは?」
「友よりお姉様優先です!」