慣れない部屋の窓から空を眺める。
外はもう真っ暗だ。
藤堂君は今、お粥を食べて寝付いた所だ。
結空ちゃんには先ほど電話で事情を話した。
藤堂君の部屋に泊まるかも、と伝えたら、電話口で結空ちゃんが一瞬固まったのが分かった。
でもすぐに「朔君の面倒、しっかり見てあげてね」と了承を頂いた。

藤堂君の部屋はシンプルだ。
生活に必要なものしか置いていない感じがする。
お粥作りに使わせて貰った食器類なども片付け終わり、やる事が無くなった私は、藤堂君の眠るベッドに腰掛け、あどけない寝顔を眺めていた。
さっきまで辛そうに顔を顰め、随分心配させられたが、どうやら薬が効いてくれた様だ。
泊まり込みで看病も覚悟していたが、これならもう大丈夫だろう。
冷静に考えたら、恋人でもないのに一人暮らしの男性の部屋にお邪魔するなんて、余り褒められた行動ではない。
五葉大への進学が決まってるのに、バレたら即、淑女としてあるまじき行為だと、特待生の権利を剥奪されてしまうのは明白。
鍵はポストに返却し、置き手紙を残しお暇させて貰おうかな。
そっと、ベッドから離れようとしたが、手首をグッと握られ阻まれた。

「藤堂君?起きたの?」
「帰るのか?」

瞼を一生懸命持ち上げ、私を伺い見る藤堂君。
目は口ほどに物を言う、か。
そうだよね、体調悪い日って心細くなりやすいもんね。
仕方ない。
ま、五葉大にバレなきゃいいだけの事だしね。

「なぁ、俺の事好き?」
「え?」
「今日はまだ聞いてない」
「何です、それ、大好きですよ」
「そっか、良かった。俺も、」
「駄目ですよ藤堂君。それはルール違反です」

このゲームにおいて、貴方は常に受け身の、追われる立場であって下さい。

「・・・勝手に、ルールを設けてるだけだろ」
「私が始めた告白ゲームですからね、ルールも私が決めていいんです」
「相変わらず、勝手な人だな。振り回される俺の立場も、考えて欲しいよ」
「お喋りは此処までにしましょ、眠って下さい」
「帰らないよな?」
「今夜は、懐っこい藤堂君を眺めながら一晩過ごす予定です」

頑張って持ち堪えていた瞼を、やっと下ろしてくれた。
さて、握られたままの手首はどうしようか。