ふわっと窓から優しい風が注がれる。
風により、結衣の机に飾られてあるツギハギだらけの結羽の手紙が運ばれ、朔の頭の上に乗る。
それはまるで「急ぎ足は禁止だよ」と結羽に叱られた様だなっと朔は思う。
結羽に窘められたら、朔は落ち着くしか無い。

「さてと、一旦勉強休憩して、犬猫カフェにでも行こうか?」

朔は手紙を元の位置に戻し、結衣に聞く。
でも返事は返らない。

不意に、朔に寄せられる結衣の体温。
自分に抱き着いて来た結衣の背に、朔は腕を回し、柔い力で抱き寄せる。

「結衣?どうした?何か寂しくなったか?」

結衣は時折、寂しさの滞納により甘えん坊モードになる。
その時、朔は思いっきり結衣を泣かせて甘やかす。
けど、今はそうではないらしい。

「・・・藤堂君と、その、エッチな事したくない訳じゃなくて、まだ、そういう事が、怖くて、もう少し、待ってて欲しいです」

本人も恥ずかしいのだろう、辿々しい口調で、朔に想いを伝え様と奮起する結衣。
余りに可愛い台詞と行動に、良からぬ欲が主張し始めそうになるのを、朔は必死に堪える。

トントン。
とドアが鳴れば、結衣が慌てて朔を突き飛ばし離れた。
朔は胸の内で「何時もながらナイスタイミングです結空さん」と感謝した。

「そろそろ頭を休めたら?丁度おやつタイムだし」
「うん、そうする。結空ちゃん、藤堂君と出掛けて来るね、犬猫カフェで癒やされて来る」
「余り、ワンちゃんを煽っちゃ駄目よ結衣、噛み付かれて痛い思いをするのは自分なんですからね」
「うん、ロイ君は利口な子だけど、戯れる時は気を付けるね」
「朔君も、慌て過ぎると、お猫様に怯えられ逃げられちゃうかもしれないわよ、慎重にね」
「・・・ですね、はい」

結衣と朔、それぞれ結空に忠告を貰い、犬猫カフェへと向かう。

第三章 終。
愛言葉を贈らせて。 完結。