「ん?俺が、結羽にとっくに振られてるの知らない?」
「知ってます。けどそれは、結羽が藤堂君に遠慮したからであって、結羽の本心じゃなかったと思うんです。結羽、いつも藤堂君の事を心配していましたから」
「多分それ、異性というより、友やペット枠での心配だと思うんだけど。と言うか、俺が結羽に振られた理由、大好きな恋人がいる、からだったんだけど」
「・・・え?」

朔は結衣を抱えたまま、片手で自分のポケットからある物を取り出し、結衣に見せる。

「それって」
「そ、クリスマスの時に貰ったキーホルダーの片割。結羽の相手、穂波多駕、あいつだと思う。はっきりとは断言は出来ないけど。穂波多駕経由で俺に返されたから、おそらくそうなんじゃないかなってさ、結衣とお揃いで持ってろって事だと思う」
「二羽居た筈なのに、いつの間にか一羽になってて、探しても見つからなくて不思議だなっとは思ってたけど・・・結羽と多駕が」

グルンっと、急に結衣が朔の腕の中で回り、向き合う形で見上げてきた。
その表情には、怒りが浮かんでいる。
ただ朔は、その表情ですら、可愛いと思ってしまう。

「私、何も聞いてない!!」
「いや、俺に言われても。結羽と穂波なりの考えがあっての事だろうし、でも何となく教えなかった理由は想像付くちゃ付くけど。今度、穂波本人に直接聞いてみれば?手っ取り早く結空さんに探り入れるって言うのも有りかもな」
「結羽に、隠し事された。私だけ仲間外れ・・・」

結衣は頭を項垂らせ、朔に凭れ掛かる。
わかり易くイジけ、雰囲気を淀ませ落ち込む結衣。

「結衣、不貞腐れてる所申し訳ないけど、俺のお願い聞いて貰ってもいい?」
「お願いですか?」
「そ、言わば、そのノートを渡したご褒美を俺にくれないかな」
「只で貰うのは確かに気が引けますね、私が出来る事ならば」
「簡単だよ。鈴野結衣の気持ちを聞かせて欲しい、俺の事、好き?」

その朔からの問いかけに、結衣は硬直した後、顔中を真っ赤に染めた。
結羽の想い人が朔でないのなら、朔へ傾ける感情を抑える事はない。
けれど、いざ、その感情を言葉で表そうとすると、恥じらいが邪魔をする。

「言わなくちゃ、駄目ですか?もう、お気づきでしょ?杉原衣は、一切、嘘付いてませんでした」
「結衣からは、まだ聞いてないよ、聞きたい」

照れて言い淀んでいる結衣の可愛いらしい姿に、朔は楽しくてしょうがない気持ちになる。
杉原衣の時は、あんなに恥ずかしげもなく堂々と告白を繰り出していたと言うのに。

「わ、私は・・・」

朔は改めて、結羽に感謝する。
こんなにも愛おしいと感じる女の子と自分を、巡り合わせてくれた事に。

「私は、貴方が・・・好き、です」
「俺も結衣が好きだよ」

震える嬉しさが抑えきれず、朔は腕の中にいる結衣に口付けた。


*おまけ絵*