名残惜しそうに包容を開放すると、朔は無言で結衣の手首の縄を解く。

「えっと、ありがとうございます、その、服着て来ますね」

朔は静かに頷く。
結衣は、あんな男に触れられた服に、腕も足も通したくないが、何時までも下着姿で居る訳にもいかず、今は我慢してそれを着直した。

着衣を終えると、結衣は迎えに来てくれた朔と多駕に改めて向き直り、頭を下げる。

「来てくれてありがと、多駕、藤堂君。二人の顔見たら、ホッとしちゃった」
「俺達が到着する前に、結衣が一人で解決しちゃってたみたいだけどな。たく、新井には関わるなって言ってあっただろうが」
「うん、ごめん多駕、今回は流石に私も反省した。所で、どうして多駕と藤堂君が一緒に居るの?知り合いだったの?」
「あぁ、まぁな。一応確認させて欲しいんだけど、怪我はないな?怖い事とか、野蛮な事はされなかったか?」

多駕が問えば、結衣は仄かな笑顔を浮かべ、無事と言う事を知らせる。

朔はずっと無言のまま、今だ床で悶えてる葉太郎を憎々しく睨み、歯を食い縛り、拳を握り締めていた。
いつ箍が外れても可笑しくない朔の肩を、多駕はグッと抑える。

「まぁ、服は剥ぎ取られたけどね。後、気になると言ったら、変な香水を嗅がされたぐらいかな」
「香水?」
「頭がぼーっとしたり、体に痺れが出たり。でも、ブチギレたら治ったみたい」
「そうか。もう大丈夫なんだな?」
「うん」
「後始末は俺がするから、結衣は藤堂と先に帰れ。結空さん凄く心配してるから、早く帰って無事な顔を見せてやれ、な?」
「え、でも」

この収集の難しい状態を、多駕にだけ任せていいのか迷う。
返事に躊躇う結衣の手を、朔は掴む。
そのまま強引に引っ張り歩き出す。

「ちょ、待って、藤堂君!?」
「・・・」

制止する結衣の言葉を聞かず、朔は握る手を緩めない。
朔の表情を横から窺えば、その顔はとても険しく、今にも泣いてしまいそう。

ーーーーなんて顔してるのよ。そんな顔されたら、認めたくないのに、認めざるおえないじゃない。藤堂君は本当に、私の事が好きな様だ、と。