*結空と朔の作戦会議*


「朔君の心変わりの早さには、お姉さん吃驚だわ。あんなに、結羽結羽と言っていた子が」
「結羽の事は今でも好きですよ、大切な女の子である事に変わりありません。ただ、杉原衣さんがいとも簡単に上書きしていったって言うだけで」
「罪な子よね、結衣って」
「全くですね」

鈴野家で夕飯をご馳走になり、そのままリビングのソファに腰掛けながら結空と和やかに談笑を交わしている朔。

「でも、結羽に向ける感情はやっぱり恋とは違ってたと思うんです、結羽が笑って幸せなら、俺は満足だったし。結衣みたいに、触れたいとか、独り占めしたい、とかは思わなかったですから」
「そう簡単に、結衣はあげないわよ。多駕君の審査も必要かな」
「因みに伺いたいんですけど、結衣と穂波多駕の関係は純粋な幼馴染関係って事で良いんですよね?」
「朔君は妬きもち焼きさんね。えぇ、結衣と多駕君は凄く仲良しで信頼しあってるけど、それは友人としてよ。ただ、結衣の懐き度で言うなら、朔君はまだまだ多駕君には敵わないかな」
「どっちみち、強敵ではあるんですね」
「ふふ、そうね。それから、結衣って多方面から慕われてるから、結衣と恋愛関係結びたいなら、色んな反感を覚悟しないといけないわね」
「ライバル多すぎません?臨むところですけど」
「あら、勇ましいワンコだ事」
「ご主人様から、お姫様を守る番犬に指名されてますんで。ご主人様が、安心してお姫様を見守って居られる様に頑張りますよ。ま、番犬で終わるつもりはないんですけどね。じゃ、俺はキッチンで洗い物してる結衣の手伝いに行って来ます。そのついでにナンパもして来ます」
「お手柔らかにね」

ソファから立ち上がると、朔はリビングから続くキッチンの方へ向かう。
キッチンから、楽しそうな朔の声と、不機嫌そうな結衣の声が交互に聞こえて来る。
結空は二人に届かない様に小さく呟くーーーー「がんばってよね、朔君」と。