*恋煩い*


五葉大学へ向かう途中の道に、見知った後ろ姿を見つけた。

「多駕」

呼べば、振り返り足を止めてくれたのは、結衣と結羽の幼馴染である穂波多駕。
多駕も結衣と同じく、五葉大に通っている。

「よ、おはよう、結衣」
「おはよう」
「今日も朝から浮かない顔してんな。藤堂か?」
「まぁ、うん」
「そもそも結衣が弄んだのが悪いんだし、藤堂の気が澄むまで構われておけば」
「弄んだ言わないで、さっきも藤堂君に同じ事を言われたんだから。仕方ないでしょ?結羽の頼まれ事だったんだから」
「ならさ、結羽が(もたら)してくれた縁だと思って、藤堂とのこれからを考えて見ると言うのも有りだと思うよ、俺は」
「藤堂君とは距離置きたいの。これ以上、好きになりたくないもの」
「なんだ、ちゃんと自分の感情わかってんじゃん。因みにそれは、恋愛感情の好きでいいんだよな?ベタなボケかまして親愛の好きなんて言わねぇよな?結衣なら有り得るからさ」
「・・・親愛なら、ここまで憂鬱にならない。藤堂君は結羽の好きな人だもの、結羽に嫌われるのは御免よ」
「シスコン姉妹だよな、ほんと」
「うるさい、藤堂君の話はこれでおしまい。早く行かないと遅れちゃうよ」

全然時間には余裕があるのに、わざとらしく急ぐ結衣に、多駕もしょうがなしに付いて行く。