*また今度*


「ただいま、結空ちゃん。お姉ちゃんの帰宅までには間に合ったかな?」

多駕に送って貰い一緒に帰宅すると、結空ちゃんが玄関で既に待ち構えていた。
ずっと、此処で待っていてくれたのかな。
目も真っ赤だ。泣かせちゃったな、騙す様に抜け出してごめんなさい。
私を叱りたいし、文句も言いたいだろうに。
結空ちゃんは私を確認するかの様に頬に触れ、静かに言う。

「おかえり、楽しめた?」
「うん、とても」
「そ、なら良かった。結衣ならまだ帰って来てないから安心して。結羽と多駕君の逃避行はバレずに済みそうよ」
「結空さん、今日、結羽を連れ出してご心配をお掛けした事、本当にすい」
「多駕君、結羽を喜ばせてくれて、ありがと」

多駕の謝罪が終わる前に、結空ちゃんが遮って止めた。
うん、多駕も私も、誰も悪くない。
悪いのは神様だもん。
結空ちゃんを泣かせてしまった事に関してだけは、後でたっぷり奉仕させて貰おう。

「じゃ、俺はこれで」
「気を付けて帰ってね多駕」
「あぁ、またな」
「またね」

多駕は結空ちゃんに軽くお辞儀をしたのち、鈴野家を後にして行った。
ドアが閉まる瞬間、少しだけ、多駕と目が合う。
さらっと別れた事に、結空ちゃんの方が不思議に首を傾げていた。
まるで、それでいいの?と言いたげだ。
いいの。
だって多駕が、お別れさせてくれなかったんだもの。


第二章 終