*永遠の約束*


『多駕と出掛けて来ます、心配しないで。お姉ちゃんがバイトから帰ってくるまでには戻ります。結羽より』

結空ちゃん、ごめんなさい。
手紙を出して欲しいと結空ちゃんに頼み、外出して貰った。
私はその隙に、メモ書きだけを残し、お忍びで迎えに来てくれた多駕と家を出た。

「あ~ぁ残念、化けて出たかったのにな」
「俺も、それは少し残念かな」

運よく、今日の体調はすこぶる良好だった。
天気も味方してくれた。
最高のお出掛け日和だ。
ただ、久しぶりの外出だからか、すぐ疲れてしまうし、体の力の入れ方が少し難しかったりする。

多駕とも会うのは久しぶり。
繋いだ手から伝わる多駕の温さが嬉しい。
私を、普通の恋する女の子で居させてくれる。

小鳥フェスタは、とあるビルの雲に近い場所で開催されていた。
文鳥、十姉妹、インコ、カナリア。
私にとってはパラダイスな光景が拡がっている。
今すぐ、すりすり、もふもふしたい。

「可愛い鳴き声に、真ん丸フォルム。来世は鳥類になって、もふもふに挟まれたい」
「結羽と一緒なら鳥類も悪くないな。でも今は、人間を謳歌しような。早速、ふれあいコーナー行くか?」
「行く~」

可愛い小鳥達に囲まれ懐かれ、幸せいっぱいだ。


*****


多駕がモテるのは知っていた。
見目もカッコ良い。
朔は、可愛い系のカッコ良いだが、多駕は知的な良さを纏う、落ち着いた大人の男のカッコ良さがある。
性格も優しい。
沸点が高いので中々怒る事はないが、怒らすととにかく怖い。
小学生の頃、私のスカートを捲った男子を、濁ったプールに蹴り落とした事もある、怒った多駕は容赦を知らなくなる。
でも普段は穏やかで、温かみのある人・・・なので、モテる。

トイレから戻ると、清楚な女子に話しかけられている多駕。
今は小鳥の堪能を小休止し、昼食中。

ーーーー嫌だな。

見慣れた光景だ。
けれど、久しぶりに直視したのもあり、尚更、嫉妬以上に、もの寂しい卑屈な感情を抑えられない。

私は居なくなる。
なら、私が居なくなったその先の多駕は?
多駕には親が定めた許嫁が居るし、多駕を好きになる人なんて、これからだって沢山現れる。
きっと、恋人には困らない。

でも、今は、今だけはまだ、私だけの多駕で居て欲しい。

「多駕、ごめんね、トイレが思ってた程混んでて。えっと、多駕のお知り合いの方ですか?」

女性に向かい、牽制を込めて、業とらしく冷黒な笑顔で話し掛ける。
女性は、余裕のあるクールな笑みを返して来た。

「ナンパ失敗か。彼女さんが席を離れてる間に、口説いて連れ出しちゃおうかなって思ったのに、お兄さん、全然誘いに乗って来てくれないんだもの。妬かせて御免なさいね」

ヒールの音を靡かせ、女性は後ろでに手を振りながら、その場から遠のいて行く。

「・・・妬いたの?」
「妬いた、多駕モテ過ぎ、腹立つ、顔が良すぎ」
「なら、整形でもすれば良いか?」
「駄目。私も、多駕の顔は好みだもの」
「結羽の好みで嬉しいよ、そこだけは両親に感謝しとくかな。そろそろ後半戦、行くか?」
「行く。シマエナガの写真展見に行こ」