もうどうせ死んじゃうのなら、と、貯まっていた神様への苦情を言わせて欲しい。
心の中の突っかかりを全部叫んでやる。

「神様なんて嫌いだ!なんでお父さんとお母さんまで連れて行っちゃうかな!?それで私まで居なくなったら、お姉ちゃんが一人ぼっちになっちゃうじゃん。これ以上、お姉ちゃんから何か大切なものを奪って寂しがらせるなら、神様だって蹴っ飛ばしてやるんだから。あ~もぉ!お姉ちゃんをずっと側で守ってたいし、お姉ちゃんの花嫁衣装だってみたい!」
「結羽が守る側なのかよ」

カラオケボックス内なので、一目を気にせず出せる限りで叫ばせて貰った。
ちょっと目眩がし、呼吸が苦しくなる。
でも、まだまだ思いの丈が収まらないので、一度クールダウンしてからお喋りを再開させた。

「多駕、お姉ちゃん(私の宝物)が困った時は、力を貸してあげてね」
「あぁ、分かってる」

愛されお姉ちゃんだから、お姉ちゃんが困った時は誰かしら力を貸してくれるし、近くで支えてくれると思う。
それでも、家族との思い出がきっと、お姉ちゃんを寂しがらせ悲しませてしまう。
だから少しでも早く、悲しみを押さえつけるくらい愉快な家族を、お姉ちゃんには手にいれて欲しい。

「気掛かりな事多すぎだし、やりたい事だって沢山ある、本当は死んでなんてられないのに私は」
「やりたい事に、俺との未来はある?」
「勿論。多駕のお嫁さんになって、多駕との赤ちゃんも欲しい」
「絶対可愛い子が生まれるな。結羽似の娘だったら、俺激甘な父親になる自信しかないよ。嫁がせてやらない」
「私は、多駕似の子も欲しいな」
「そうだったら、結羽を取り合って、毎日が争いの日々だな」

優しい声で、多駕が当然の様に口にする幸せな未来像。
洪水していた涙は何時の間にか止まっていた。

「あ、そうだ多駕。これ一つ預かって。可愛いでしょ」

私は多駕に、シマエナガのキーホルダーを一羽渡す。
そして私とお揃いと言わんばかりに、もう一羽、多駕に見せる。

「どうしたんだ?これ?さっきの小鳥フェスタで買ったのか?」
「違うよ。お姉ちゃんと朔から去年のクリスマスに貰ったの。私のお気に入り」

贈ってくれたお姉ちゃんと朔に、後ろめたさを覚えるけれど、でもどうしても、多駕とペアで持って居たかったのーーーー今はね。

「でも、預かるってなんだ?」
「私が死んだら、それ、朔にあげて。きっと、お姉ちゃんとお揃いになるから」
「…分かった」
「ねぇ多駕、何か歌ってよ」

魂に多駕の歌を保存して、あの世で多駕を待っている間のBGMにさせて貰う。

多駕が、カラオケの操作パネルを渡して来た。
どうやらリクエストしろ、って事らしい。
じゃ、遠慮なく。