*姉の恋路視聴者*


本日はバレンタインデー。
私もしぶといものだ。
しんどい時はとことんしんどく、もう諦めの境地に立つが、今日はどうも調子が良く、リビングのソファで土砂降りの雨を眺めていた。
さっきまで晴天だったのに。
そういえば天気予報お姉さんが、時々豪雨と注意喚起してくれていたっけ。
バシャバシャと水音に続き、玄関が慌ただしく開く。
お姉ちゃんのご帰宅だ。
タオルを持ち、玄関に向かう。
そこには雨の洗礼を受けた姉が立っていた。
髪もぐしゃりと濡れ、双葉校のブレザーを肩から羽織り、手には見た事のない傘を持っている。

「おかえりお姉ちゃん」
「ただいま」
「朔にチョコ渡せた?」

そう尋ねたら、お姉ちゃんの動きがピタリと止む。

「・・・」
「・・・お姉ちゃん?」

顔を真っ赤染め、緩々弱々な庇護欲を誘う表情に変わるお姉ちゃん。
うっわ、これは最高に可愛くて色っぽい。
朔がお姉ちゃんに、何かしらのアクションを起こしたのは間違いないだろう。

大抵の事なら動揺を悟られない様にするお姉ちゃんが、手元の傘を見たり、ブレザーに目線を落としたり、私に助け舟を求める様に視線を向けたりと、おどおどと落ち着かない様子を見せる。

「とりあえずタオルどうぞ」
「あ、ありがと」

おそらく朔のであろうブレザーを脱ぎ、私がそれを受け取る。
タオルで髪や服を拭き出すお姉ちゃんを見て・・・。

「お姉ちゃん、その格好、朔の前でも晒した?」

黄色のブラジャーは透けて浮かび、雨で服が体にへばり付き、お姉ちゃんのプロポーションがはっきりと確認出来る。
我が姉ながら、雨で濡れた姿はとても神秘的で芸術的な美しさがある。
ブレザーを貸してくれた朔には拍手を贈りたい。
こんな卑猥な姿を他の男共の目に晒さずに済んだ。
そして、危機管理の乏しい姉には、後で言い聞かすつもりだ。
自分が今、どれだけ人を誘惑する格好をしてるかを、みっちりと教え込まないと。

「え?晒す?」
「あ~まぁいいや、質問戻すね。朔にチョコ渡せた?」
「うん、受け取ってくれたよ、仏頂面ではあったけど。ただその後、急な雨に降られちゃって、藤堂君は傘持ってたんだけど、私に付き合って暫く屋根がある所で一緒に雨宿りしてくれたの。でも藤堂君が突然・・・その、あの、藤堂君が強引にブレザーを私に被せて、さらに傘も強引に私に握らせて、豪雨の中走って行っちゃって」

なるほど、朔の奴、お姉ちゃんの色気に耐えられなくなったって訳ね。
そしてお姉ちゃんは、一部を端折って私に報告している様だ。
二人にどんなロマンス展開が起こったのか気になる所だけど、野暮な事を追求するのはよしておこう。

「藤堂君、風邪ひかなきゃいいけど。悪い事しちゃったな」
「むしろご褒美与えたと思うよ。それより、お姉ちゃんも早くお風呂であったまってきたら?」
「ん、そうする。結羽も、少しでも体調が悪くなりそうだったらお部屋に戻んなきゃ駄目だからね」
「はーい」

出来る事ならば、お姉ちゃんと朔のロマンスが今後どう転がって、どう決着を迎えるのか、最後まで視聴していたい所だ。