*プロローグ*


今日で11月も終わりか。
なんてぼんやり思いながら、人気のない路地裏の道を歩き、帰路に付いていると。

「初めまして、藤堂朔(トウドウ サク)君。私、杉原衣(スギハラ コロモ)と言います。四葉女学園の3年です」

眼鏡を掛け、癖のあるロング髪を靡かす女性に声を掛けられた。
すみれ色のリボンに、白を基調した清潔感ある制服を身に着けている。

「四葉女のお嬢様が俺に何かご用でしょうか?」
「単刀直入に申します。私、貴方が好きです、お付き合いして頂けませんか?」

愛嬌のある笑顔で、要件だけを述べてくる彼女。

「悪いけど、俺はアンタを知らないし、付き合う理由なんてないんで」

心が酷く澱んで居たのもあると思う。
断るにしても、彼女に(イラチ)を含む、随分冷たい物言いをしてしまった。

「私、諦め悪い方なんです、写真部が売っていた貴方の写真を見た瞬間、一目惚れで。今日はただ先制布告にきただけですので、またチャレンジしに来ますね」

彼女はそう言い残すと踵を返し、軽い足取りで路地裏を抜けて行き、もう姿は見えない。