出口までの道は平和だった。
とある場所に着くと、ささやかに飾られていたイルミネーションの道が一気に華やいだ。
木々や道沿い、夜空いっぱいに色様々なイルミネーションが彩り賑わう。
それを見上げる彼女は、とても嬉しそうに笑顔を浮かばせている。

「きれぇ、素敵な装飾ですね」
「だな」

これは確かに、700円の価値以上はありそうだ。

「どうだい?楽しめたろ?」

戻るなり、声掛け兄さんが誇らしげに聞いてくるものだから正直に「えぇ、とても」と返しておいた。
俺と彼女にそれぞれ渡されるシマエナガのキーホルダー。

「これ参加賞のシマエナガのキーホルダーね。良かったら来年もまた来てよ。今年以上に凝った演出にして見せるからさ」
「それは楽しみです。でも、来年も最初の靄の演出だけは残して欲しいです、とってもロマンテックで素敵で、私つい、見惚れちゃいました」
「靄の演出?そんな仕掛けをした覚えはないんだけどね」
「え、でも、」

目的のシマエナガのキーホルダーを貰い上機嫌なのだろう。
楽しそうに、声掛け兄さんと会話する杉原さんの手を引っ張る。

「杉原さん、ほら、もう行こう。じっとしてると寒いし、歩こう」
「はは、嫉妬深い彼氏だな」

声掛け兄さんの茶化し声は聞こえなかった事にする。


*****


結局、冬祭り終了を告げる音楽が鳴るまで、彼女とクリスマスイブを過ごした。
それなりには楽しめた。

「今日は付き合ってくれて有難うございました、楽しかったです」
「俺も。気を付けて帰れよ」
「はい、藤堂君も。あ、スライム事件は忘れて下さいね」
「努力はする」

本来待ち合わせに指定された駅で、杉原衣と解散した。
夜も遅いし、家の近くまで送ろうか?と提案したが、丁寧に断られた。

俺の手には、サンタクッキーの入ったお菓子の袋が持たされている。
彼女がバイトしていたケーキ屋で販売しているものらしく、クリスマスプレゼントだと半ば無理やり渡された。
シマエナガのキーホルダーは、明日、鈴野家に届けるとしよう。