「で、どうするんだい兄さん達、恋慕小岳回ってくかい?一回り700円と格安だよ」

格安何だろうか?と言う疑問はさておき、俺達は恋人同士ではない。
つもり、ひんやり肝試しに参加するメリットがないわけだ。
断ろうとした矢先、杉原さんが口を開いた。

「是非、参加で」
「杉原さん?」
「お願い藤堂君、付き合って。あれが欲しくて」

杉原さんの視線の先には、北海道の人気の野鳥、シマエナガのキーホルダーがある。
恋慕小岳を一周し戻って来れたら貰える参加賞の景品らしい。
そういえば、結羽も好きだったな。
小鳥とか文鳥とか、鳥系全般に。

「クリスマスに肝試しって言うのも、何だか楽しそうだしな」
「怖かったら、抱きついて来ても良いですからね」
「はいはい、そん時は遠慮なく甘えさせて貰います」

杉原さんが参加費の700円を払おうとしたので、そこは男にカッコつけさせて欲しい見栄もあり、一悶着ありながらも、俺が支払わせて貰った。

肝試しのルールにおいて、参加者は手を繋いで回る事と説明を受けた。
なので、ほんのり色づくイルミネーションで作られた道を、俺と彼女は今だ手を繋いだまま闊歩中である。

「私が参加をお願いしたわけだから、藤堂君が損をする事ないと思います」

どちらが参加費の700円を出すかで揉め、俺の700円の方を声掛け兄さんが受け取った事を、今だ納得していない感じの杉原衣さん。

「可愛い女の子に、お金出して貰うなんてカッコ悪い真似、出来る訳ないだろ?」
「見え透いたお世辞は結構です。今度、何らかの形でお返ししますから」

随分と負けず嫌いな様で。
別に世辞を言ったつもりはないが、わざわざ修正する事もないだろう。

「藤堂君は言い伝えのお寺、本当にないと思いますか?」
「何?急に?」
「実はですね、私そのお寺の場所を知ってるんです。以前、恋慕小岳のお寺を探しに冒険していたら、本当に見つけてしまったんです。すっごい道のない解りづらい場所にひっそりと存在してるんです。機会があれば、藤堂君にもお教えしますね」
「随分と好奇心旺盛なお嬢様だな」

寺の場所よりも、俺に対する行動力の謎を教えて貰いたいものだ。