なっ――!


私が言葉を発するより前に「お見送りしますね」急によそよそしく他人行儀になった逢崎さんに連れられて、気付けば私は店のすぐ外に追い出されていた。



「ちょ、ちょっと!さすがにひどくないですか?自分から引き入れておいて……」


私を外に連れ出すと、「それでは~」そう言って即行Uターンしようとした彼の背中にすかさず声をかける。


彼は降りかかった私の一声に足を止め、再びこちらへと振り返り、店内や通行人に聞こえないように声を潜めて、私を店の端へと追いやった。



「ちょ、ちょっと、離して!」

「あのなぁお客さん。つーか、別にもう客じゃねぇから普通でいいか。こっちも商売なんだよ。お前みたいな職も金も家もねぇとかいう最下層の貧乏ホームレスニートに紹介する物件なんて持ち合わせてねぇんだよ」

「な……!?」


“貧乏ホームレスニート”


確かに全くもってその通りの、的を射すぎているその表現にぐうの音も出ない。

私は口惜しさから下唇をぎゅっと強く噛んで、言い返せない腹いせにこれでもかというほど強く目先の彼を睨んだ。


「ま、そういうわけだから。うちではお前みたいな社不の相手は手に余るんで、どこへなりとも行ってクダサイ。まー、普通の感覚の業者なら、まず取り合ってもらえないと思うけどな」


~~~っっ!!!


そこまで言われて黙っていられるほど、私は人間が出来ていない。


誰が、社不――社会不適合者だっ!!!

この男、絶対に許さない。ここまで他人に一方的に蔑まれたことはない。

あの能無しポンコツ上司が可愛くすら思えてくるレベルだ。




「……りん、してたくせに――」


「……あ?」



気付けば声が漏れていた。

再び背を向けて立ち去ろうとしていた逢崎さんが、私のこぼれ出た言葉に足を止め、顔を歪ませて振り返る。




「――不倫してたくせに!!!」