「なるほど」


私の話を真顔で聞いていた逢崎さんは、カタカタとまた手元のPCに何かを打ち込んでいく。


「で?次の仕事、決まってんすか?収入と資金は?その寮の退去日は?」


あまりに呆気なくさらりと返されてしまったため、逆に私が動揺してもたついてしまった。


「え?あ、えっと、仕事はその、これからで……。なので収入ももうなくて貯金もわずかで、退去の期限はあと3日後、です……」

「……」


矢継ぎ早に繰り出された質問に、何かを考える余裕もなくありのままを答えると、そこで絶えず打ち続けていたキーボードを這う彼の動きが突然静止した。


「あの……?」


唐突に反応の途切れた彼に下げた目線の先を再び合わせると――


「つまり、次の仕事の当てもない現状無職で、有り金もなし、さらに住居も失う間際で、ろくな身分証明ももはやできない、と」

「は、はい」

「あー、それは――」


彼はそこまで言うと、怖いくらいににっこりと口元を緩ませて一言。



「弊社ではお客様のご要望には対応いたしかねますね!申し訳ないですが、即刻お引き取り願えますか?」



どこまでも完璧な最高の笑みをたずさえて、出入り口のほうに右手の平を指し示した。