そうして一夜明け、翌日土曜日のお昼頃。
「1K……家賃、管理費込み……12万……」
急きょ居住予定地を失ってしまった私は、家探しのため休日にしては珍しく朝8時に起きて支度を整え、太陽が天高く昇った11時頃、再びその街の繁華街を訪れていた。
店頭に貼り出された広告には、さすがの立地なだけあって、目を見張るような家賃相場の物件がずらりと並んでいる。
さすがに新宿駅周辺の賃貸を借りるつもりなんて毛頭ないけれど、とは言えあまりの金額にしばらく足を止めていると。
そこに声をかけてきたのが――そう、彼だった。
「お客さん、部屋探してるの?最高に良い物件、紹介するよ?」
広告を眺める私に気付いて店から出て来たのか、その人は爽やかな営業スマイルを浮かべて、私へと近づく。
その声と気配に私が振り返ってその人の顔を見た、その瞬間――
「―――あ」
見覚えのある端正なその顔面に、私は思わず声を漏らしてしまった。