「んっっ、はぁ、んんんっぁ――」
東京・新宿――
5年前に最愛の妻を亡くして、長い間もぬけの殻になっていた父の呼び出しを受け、私はひとり、人で溢れた眠らないその街へと降り立っていた。
「……」
母さんを失ったショックから仕事も儘ならなくなり職も捨て、実家にこもり切りだった父のため、この数年間私が仕送りをして生活を支える。
そんな毎日をずっと続けていた私が、まさかこの日、あんな告白を受けることになるなんて。
「もう、ダメッ……紫苑くん、きて――」
開いた口が塞がらなかったし、私は私でこの所トラブルに見舞われまくっていて正直かなり限界寸前だったというのに、そんな娘の前でも、久々に見た父はへらへらと笑っていて。
「ダメだよ、今日は旦那さん出張から戻るんじゃなかった?」
「そう、だけど……ッ、紫苑くんの……お家に行きたい……」
「だーめ。俺ん家は俺以外、立ち入り禁止」
「――んぁっ……もう、イジワル……」
そんな、考えることがいっぱいありすぎて脳死間際の私の目の前で、繰り広げられているのは――
―――知らない男女の深くみだらな……情事。