「明けましておめでとうございます」
「あ、美怜ー!おめでとう。今年もよろしくね」
「はい。こちらこそ本年もよろしくお願いいたします」

年が明けて初出勤の日。
美怜はロッカールームで先輩達に挨拶をする。

オフィスで課長からも年始の挨拶があり、皆でよろしくお願いいたしますと気持ちを新たにした。

「早速今日は、広報部の写真撮影がある。ミュージアムのオープン準備と合わせて進めてください」
「はい」

声を揃えて返事をすると、それぞれ持ち場に向かった。

「美怜ー、大丈夫?何か手伝おうか?」

ロッカールームで撮影の為に着替え始めた美怜に、佳代が声をかけに来た。

「ありがとうございます。一人で大丈夫です」
「え、本当に?着物って一人で着られるものなの?」
「はい、慣れてますので。初詣も着物で行きましたし」
「そうなんだ!じゃあ準備できたらエントランスに来てね」
「分かりました」

美怜は姿見を見ながら手際良く、鮮やかな朱色の振り袖を着付けると、髪をアップにしてかんざしを挿し、メイクも華やかに仕上げた。

今日は初出勤ということで、それぞれの部署で着物を着られる人を撮影して、ホームページにご挨拶文と一緒に載せることになっている。

ミュージアムチームは美怜が代表して撮影に臨み、そのまま着物で接客に当たることになっていた。

「ひゃー!美怜、美しい!何この色気。どうしたの?」

支度を終えた美怜がエントランスに行くと、佳代が美怜の着物姿に目を見張った。

「まさかこんなに美怜が着物美人だったとは。てっきり七五三になるかと思ってたのに」
「佳代先輩…。上げてから落とすのやめてください」
「ごめんごめん。でも本当に想像以上の美しさよ。思わず見惚れちゃうわ」
「ありがとうございます」
「やだー!仕草まで色っぽいわ」

キャーキャーはしゃぐ佳代の声に、どうしたの?と他の先輩達も集まって来る。

「み、美怜?!ほんとに美怜なの?」
「おおー、これは見違えたな」

課長までもがやって来て、美怜はひとしきり、大変身だの化けただのともてはやされた。

撮影の担当者が来ると、外に出て建物をバックに門松の隣に立って何枚か写真を撮る。

その後も美怜は一日中、振り袖姿でお客様を案内した。