「美怜ー、お誕生日おめでとう!」

十二月二十日。
美怜の二十五歳の誕生日がやって来た。

「ありがとうございます!」

出勤するなり、先輩達が次々とプレゼントを手渡し、お祝いの言葉をかけてくれる。

「結城さん、おめでとう!これは私から。あ、選んだのは女房だけどね」

そう言って課長も、小さなうさぎが飾られたフラワーアレンジメントを美怜に渡した。

「ありがとうございます!わあ、とっても可愛い!奥様にもよろしくお伝えください」

美怜はたくさんのプレゼントを抱えて満面の笑みを浮かべる。

その日はミュージアムの案内も穏やかに済み、閉館後は忘年会も兼ねて皆で食事に行くことになった。

掘りごたつの個室で鍋を囲み、皆で賑やかにワイワイと盛り上がる。

すると「お疲れ様でーす!」と卓がふすまを開けて入って来た。

「あれ?どうして卓も?」
「誕生日プレゼント持って駆けつけろってお姉様方のお達しがあってさ。はいよ、プレゼント」
「ありがとう!ん?これなあに?ぬいぐるみ?」

白くてモコモコした手触りの良い、ひつじの人形のようなものが袋に入っている。

「それ、ひつじの湯たんぽ」
「湯たんぽ?!いい、湯たんぽいい!毎晩ぬくぬく眠れるー。ありがとう!卓」
「どういたしまして」

笑顔を弾けさせる美怜に、卓も頬を緩める。

隣に座った卓のグラスに、美怜はビールを注いだ。

しばらくは美味しい鍋を食べながら、おしゃべりを楽しむ。

美怜が反対隣の課長と話し始めたタイミングで、卓は佳代に声をかけられた。