「で、考えた訳ですよ。異性の友達が親友になるか、恋人になるかの分岐点を」

程よく酔っ払うと、卓はおつまみを片手に熱弁を振るい始めた。

「つまり、ずっと友達止まりだった男女が、ふとした瞬間、おやや?って雰囲気になる。で、そのままなし崩し的にそうなって、結果、あららって。だから異性の親友は、単にそんな雰囲気になったことがないだけってことですよ」

ん?と成瀬は首をひねった。

「ってことは、富樫は異性の親友が成立しない派になるぞ?」
「そうなんです。突き詰めるとそうなりますよね。まあ成立はするけど、いつまで続くかは分からない、ちょっと危うい関係性ってことかな?」

ふーん…と美怜は考え込む。

「お互い同じ気持ちだったら恋人に進展してもいいけど、どちらかがそうじゃなかったらちょっと悲しいかな」

美怜の言葉に、今度は成瀬が考え込んだ。

「それって、そこで二人の関係が切れるってこと?恋人に進展するか、今まで通りの親友でいるか、ではなくて?」
「はい。きっとそこで気まずくなって、親友ではいられなくなるかもしれません。そんなふうに関係性が変わってしまうなら、私は親友のままがいいかな」

なるほどな、と成瀬は視線を外して頷く。

「結城さんはすごく友情を大事にする人だね」
「え、あの。それは恋愛に不慣れで友達とばかり一緒にいるってことですか?」
「まさか!そんな意味じゃないよ。単純にうらやましいんだ。そんなふうに思える友人がいる君がね」

そう言って笑いかけると、ふと卓に目をやる。

「まあ、その相手がこいつっていうのがどうにも納得いかないけど…」

ぼやく成瀬の視線の先には、テーブルに突っ伏してグーグー寝始めた卓の姿があった。