十一月の最終週になると、美怜はひっきりなしにルミエールの担当者と連絡を取り合い、クリスマス装飾について細かく確認していく。

成瀬や卓とも連日打ち合わせをし、十一月最後の日の夜遅く、つまり十二月に日付が変わる数時間前に、成瀬の車でホテルに向かった。

たくさんの家具を載せたトラックも、あとからやって来る。

「それではそれぞれ、この資料を参考にしながら家具を配置してください。お客様のご迷惑にならないよう、くれぐれも配慮をお願いします。終わったところから順番に確認しますのでインカムでお知らせください」

美怜の言葉に「はい」と返事をして、作業スタッフ達が一斉に作業に取りかかる。

ホテル側でもロビーに大きなツリーを設営するとあって、何人ものスタッフが作業に当たっていた。

美怜はインカムで連絡を取り合いながら、卓と成瀬と手分けして現場に指示を出していく。

セッティングは順調に進み、日付が変わる少し前に全ての作業が終わった。

「皆様、こんな時間までありがとうございました。気をつけて帰ってくださいね」

美怜は作業スタッフを見送ると、倉本と話している卓と成瀬のもとへ行く。

「他に何かお手伝いできることはありますか?」

成瀬の言葉に、倉本は「いえいえ」と手を振った。

「とんでもない、あとはこちらでやります。遅くまで本当にありがとうございました。お部屋をご用意してありますので、よろしければ泊まっていってください」

え?!と三人は驚く。

「と言っても、二部屋しかご用意できなくて。ツインのお部屋とシングルのお部屋です。こちらがカードキーです。どうぞごゆっくりお休みください」

それでは、と作業に戻って行く倉本に、三人は「ありがとうございます」と慌てて頭を下げた。