方針が明確になったことで、美怜は日々細かくホテルのアイデアを練るのに夢中になっていた。

自社の家具をピックアップし、この場所にはどれが似合うかを考えてシミュレーションするのは楽しくて仕方ない。

ミュージアムの閉館時間を過ぎると、デスクで黙々と作業する毎日だった。

「ねえ、美怜。美怜?もしもーし、美怜ったら!」
「わっ!びっくりした。いきなりどうしたんですか?佳代先輩」
「いきなりじゃないってば。仕事に没頭するのもいいけど、卓くんとのデートはもう行ったの?」

は?と、美怜は面食らう。

「卓とデート、ですか?あ!もしかして、疑似デートのこと?」
「疑似でもリアルでもどっちでもいいけどさ。今度は電車で回れるコースをメモして渡したでしょ?あれから行ってみたの?」

ああ!と美怜は思い出す。
前回の疑似デートの報告をしてすぐに、先輩達が新しいデートプランを考えてくれていた。

「すみません、まだ行けてないんです。でも前回の疑似デートのおかげでアイデアが思い浮かんで、先方にもOKもらえたので、急いで行かなくても大丈夫になりました」
「えー、そうなんだ。でもさ、行って損はないんだから、また行きなよ?」
「はい。時間ができたら行ってきますね」
「うんうん。行ったら報告してね」
「分かりました」

そしてまた美怜はパソコンに向き直り、作業に集中した。