「という訳で、色々と参考になりました」

休み明けに出勤すると、「どうだった?卓くんとのデート」と前のめりに聞いてくる先輩達に、美怜は詳しく話して聞かせた。

「先輩方のアドバイスのおかげで、たくさん収穫がありました。いいアイデアも浮かびそうです。ありがとうございました」

笑顔の美怜に対して、先輩達は妙にがっかりした様子だ。

「あの、どうかしましたか?」
「いや、だってさ。なんで本部長も一緒なの?それじゃあデートにならないじゃない」
「はあ。本部長は車を出してくださったんです。おかげでデートのイメージが湧きましたし、おすすめされたデートコースもスムーズに回れました」
「まあそうだけど。それなら今度は、電車で行ける王道デートコースを考えてあげる。そしたら卓くんと二人で行けるでしょ?」
「え、また擬似デートするんですか?」

美怜が渋ると、先輩達は当然と頷く。

「たった一回のデートで何が分かるのよ?何度もデートを重ねていくうちに、色んな心境の変化があったり新たな発見があるものなのよ」

そうすればいつの間にか、美怜は卓くんに惹かれていくかも…と心の中で同じことを考えている先輩達は、顔を見合わせてほくそ笑む。

「そうですか、確かに。ではまた勉強しに行ってきます」
「うんうん。デートプラン、たくさん考えておくからね」
「はい、ありがとうございます」
「いやいや、お礼は言わないで。後ろめたくなるから」
「そうなんですか?それはなぜ?」

真顔で首を傾げる美怜に苦笑いしつつ、とにかくまた楽しんでおいで!と先輩達は話を締めた。