「それでは続いて、上層階の倉庫にご案内いたします。弊社の製品を一挙にご紹介し、ルミエール ホテル様に最適なご提案をさせていただければと思います」

ミュージアムを一通り案内すると、美怜はにこやかに微笑んで皆をエレベーターで倉庫へと連れて行く。

「おお、こんなにたくさん!すごいですね」

ずらりと並ぶ家具やインテリア雑貨に、倉本達は圧倒されたように辺りを見回した。

「弊社の最大の強みは、製品の企画はもちろん、原材料の仕入れから、生産、販売、発送までを、全て自社で行っていることです。中間の流通も自社でまかなっておりますので、よりスピーディーに製品をお届けできます。コストの圧縮にも繋がりますので、高い利益率を保ちながら低価格を実現しております。常に新しい仕組みやブランディングを計り、新たな需要を捉え、お客様のニーズを把握して顧客満足度の向上にも努めております」

そこまで言うと、美怜は手にしたタブレットを使って、画像を紹介していく。

「今回、ルミエール ホテルのアネックス館の空間を画像に取り入れ、全体の雰囲気やレイアウト、壁や床、照明や家具のイメージプランをいくつかシミュレーションしてみました。まず、アネックス館をいくつかのコンセプトに分け、テーマに合った内装をセレクトしました。こちらは小さなお子様連れの方を対象にしたファミリールームでございます。角が丸く安全なテーブルやチェスト、ソファもロータイプのもの、そしてお部屋の中央には、靴を脱いで遊べるカーペットエリアを設けました。更にベッドにも大きな特徴がございます」

美怜はタブレットを操作して、ベッドの詳しい仕様を説明する。

「こちらのベッドはジョイントシリーズと申しまして、二台並べたベッドのマットレス同士を完全にジョイントさせることができます。ただ並べるだけでは寝ている間にベッドの間に隙間ができてしまい、お子様が落下する恐れもあって大変危険です。このジョイントシリーズは、強力なマジックテープと連結ベルトで隙間なく簡単に広い一つのベッドに様変わりさせられます」

へえ、と倉本達は熱心に美怜の手元を覗き込む。

「ジョイント部分はマットレスの表と裏の両面についていますので、マットレスの向きを変えるローテーションを行うこともできます。組み合わせも、シングルを二台であったり、シングルとダブル、ダブルを二台など、人数に合わせて選べます。マットレスパッドやシーツもサイズごとにご用意しております。更にジョイント仕様は隣で寝ている方が寝返りを打っても、その振動が単体のマットレスの場合と比較して伝わりにくいというメリットもございます。もちろん、アフターフォローも万全です。真夜中に発注を受けても、二十四時間体制のこの倉庫から、すぐに自社の配達サービスでホテルまでお届けに上がります」

美怜がそれとなく様子をうかがうと、倉本達は言葉もなく頷いて感心している。

「ファミリールームに関してはおおむね以上です。他にも、カップルの方向けに窓際にカウンターを設けたり、キ…、キングサイズベッドをご用意したお部屋などもよろしいかと」

妙なところで噛んでしまい、思わず美怜はうつむいて顔を赤くする。

だがすぐに真顔に戻って顔を上げた。

「それでは実際に倉庫内の家具をご覧いただきながら、詳しいイメージをお伝えできればと思います。どうぞお進みください」

先方が目を留めた家具についての補足説明をしながら、じっくりと時間をかけて、美怜は倉庫を案内した。